チェコの冬は厳しく、平均気温はマイナス1.5度ですが、マイナス15度くらいまで下がる日もまれではありません。ズボンは2重に履き、厚底の靴、しっかりした手袋や帽子で防寒しないと長く外にはいられません。しばらく外を歩いていると凍えてくるので、自然と無口になってきます。しかし家の中はとても暖かく、薄着で平気。暖房は窓の下に備え付けられた温水パネルヒーター。「えっこれだけで?」と驚くくらいの緩やかな暖房で、室温を22~3度に保ちます。風の吹き出し音がないのでとても静かです。
静かで家全体がほっかり暖かい。このうらやましい環境を可能にしているのは、断熱効果の高いレンガの家です。C家の主は、3階建(屋根裏付)の事務所兼用の自宅を6年がかりで建てており、建築中の家を案内してくれました。写真№5~。建築中の家を見る前に、チェコの一般的な暖房方法について説明します。 温水暖房 №1の写真は築30年の集合住宅の温水暖房パイプです。C家に行くと、いつもこの集合住宅に泊めてもらいます。配管はむき出しで、中には70~80度のお湯が流れているはずなのですが、触っても平気です。夜間は左端中央に見える丸いバルブを締めてしまいますが、右端に縦に通っている配管パイプだけで十分暖かです。床暖房はありません。 №2の写真は、築7年の比較的新しい集合住宅の温水パネルヒーターで、こちらは配管は見えません。中央部に温度計がついていて、温度調節はやはりバルブの開閉で行います。 №1 №2 集中給湯 C家が現在住んでいるのは、パネラークと呼ばれる集合住宅(写真№3)で、築27年。社会主義時代に建てられたもの。各戸面積は60㎡と小さいながら温水暖房完備で快適です。 写真№4の丘の上左端に見えるのが給湯工場の煙突。右上端には給湯パイプが見えます。集合住宅の給湯と暖房はここから送られてくるお湯でまかなわれます。 №3 №4 №5 カレルさんの建築途中の家 C家の主カレルさんが、共産主義崩壊後にはじめた事業でお金を貯めながら、コツコツと建ててきた家(職人に委託)。着工からは6年、完成まで後1年、7年がかりの工事です。お金があったらもっと早く建ち上がったと言いますが、それにしてもすごい情熱です。1~2階がオフィス、3階が自宅。上に見えているのは屋根裏で、空の見える風呂場もある。カレルさんの夢の城とも言うべき建物です。 №6 給湯配管 給湯の配管が家中を走ります。メンテナンスのために、集中管理室も設けてあります。ここには写真№4の工場からの給湯配管は来ていないので、独自に電気で沸かします。 №7 分厚いレンガの外壁 一般住宅の標準の外壁厚は45㎝。。レンガは穴が開いており、断熱効果が高い。窓は2重ガラスで密閉式。網戸は必要ないそうです。地震が少ないヨーロッパではこのようにレンガを躯体として使えますが、日本の場合はレンガは外装材としてしか使えません。 写真右:土とカルシュームを混ぜた壁材を塗り、その上に塗装したり、木を張ったりして内装します。 №8 外気を遮断する窓 今では窓枠は樹脂製が主流ですが、写真の窓は木製で、厚みは約70㎜。(テレホンカードの縦が55㎜)しっかりと密閉できます。 窓は、全開する以外に、上部だけ少し内側に倒して開くこともできます。ヨーロッパでは木の窓は工業製品として販売されています。(娘のアパートで撮影) №9 天窓 屋根裏の天窓です。天窓は娘のアパートにも付いています。 カレルさんは、この窓の下の日だまりでの昼寝を楽しみにしていると笑います。窓は完全に一回転するので、裏側も拭ける。夏場用にブラインドも付いています。 ちなみに日本の我が家の暖房は石油温風ヒーターで、石油代は1月8千円程度。ガスの温水床暖房を導入した知人は、ガス代だけで月5万円かかったと言います。煮炊きのガス代を差し引いても、日本での温水暖房は贅沢な暖房です。(いずれも戸建て) チェコでの温水暖房費を知りたくて聞いてみましたが、集合住宅の場合、<温水+冷水+管理費>という形で請求されているので温水暖房だけのランニングコストを導き出すのは難しいと言うことでした。それでも見せてくれたある月の<温水+冷水+管理費>は約2000コルナ(当時1コルナ5円)でした。 カレルさんにチェコの暖かい家の秘密を少し解き明かしてもらったような気がしました。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 4ヵ月後 8月27日に、「天井ができたよ。見るかい?」とCさんに誘われて見に行きました。 天井に、断熱材がたっぷり詰め込まれています。 窓の下には温水暖房器が設置されてました。 完成が楽しみです。
by chigmama
| 2005-04-25 18:45
| 街と住まい
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